大判例

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東京高等裁判所 昭和41年(ネ)1418号 判決

一、労働基準法第二〇条が労働者を解雇しようとする使用者に対し三〇日前に解雇を予告すべきことを命じ、予告をせず解雇する場合には三〇日分以上の平均賃金を支払うことを義務づけているのは不意打の解雇を抑え労働者に解雇後の生活方針を樹てさせるため最小限度三〇日の生活を保障する必要を認めたが故にほかならない。

従つて解雇予告を受けた労働者は爾後三〇日間尚労務に服しその間の賃金の支払を受けるか、予告なく解雇された者は三〇日分以上の平均賃金の支払を保障されているのであるから使用者が解雇の予告もせず、予告手当の支払もしないで解雇の通告をした場合でも使用者が即時解雇を固執する趣旨で通告したものなら解雇通告は無効というべきであるが然らざる限り労働者は通告受領後も三〇日間は引続き労務に従いその間の賃金の支払を受けるか、或いは予告手当に相当する三〇日分以上の平均賃金の支払を受け得る権利を有すると解するのが相当である。(昭和三五年三月一一日最高裁判所第二小法廷、昭和三〇年(オ)第九三号判決参照)

二、控訴人の主張によれば被控訴人は昭和三八年三月一四日控訴人に対し予告手当も支払わず「明日からやめて貰う」と解雇を通告したので控訴人は同月一六日川崎南労働基準監督署を通じ解雇予告手当支払請求の手続をしたうえ帰郷し爾来開墾作業に従つていたというのであるから主張自体控訴人は被控訴人のなした解雇を承認したが故に同月一五日以降は労務の提供をせず解雇予告手当の請求をしたことを自認するにほかならず従つて本件雇傭関係は控訴人の解雇承認により昭和三八年三月一四日限り終了したと認むべきであり同日までの賃料が支払済であることは控訴人の自認するところであるから被控訴人は控訴人に対し負担する賃料債務は皆無であつてただ予告手当の支払義務のみを負担していたと認めるのが相当である。

三、而して被控訴人が昭和三九年九月一二日未払であつた予告手当として金二万二、五〇〇円を支払つたことは控訴人の自認するところであるから右金額が労働基準法に定める三〇日分以上の平均賃金に該当するかどうかを検討する。

控訴人の主張に従えば昭和三八年一月二九日以前の賃金は一日九〇〇円、同日以後は一日八〇〇円で一週間中の稼働日数は六日であつた(この事実は被控訴人も明らかに争わない)。よつて労働基準法第一二条により算定すると昭和三八年三月一四日前三ケ月の平均賃金は一日金七四一円(円位以下四捨五入)となり、その三〇日分の予告手当の金額は金二万二、二三〇円であること計数上明らかであるから、被控訴人は法の定める予告手当を支払つたと認めることができる。

控訴人は本訴請求金額を労働基準法第一一四条に基いて請求すると主張するものの如くであるが第一一四条による附加金の支払義務は原判決が説示する通り当然に発生するものではなく裁判所が支払を命じて始めて生ずるものであり本件のように既に法が定める予告手当が支払われた後には使用者に対し附加金支払の請求を申立ることができないと解するのが相当である。

(岸上 小野沢 田中)

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